現代アートの展覧会、
気を付けてないと結構ハードなのに突然出くわします。
ちょっとグロイ(ちょっとじゃない時も)作品や、
かなり風刺が効いたもの、
メンタルにズドーンと来るもの、などなど、
大体は展示会場の雰囲気やチラシで前もってわかるので、
あまりにハードそうなときは、行かないようにしています。
まあ、そこそこ慣れてはいるので、
よっぽどのことがないかぎりしれっと見て帰るんですけど、
たった一度だけ、本当にどうしたもんだか
困りあぐねた展示がありました。
場所は我が家から徒歩圏内の渋谷区で、
個人でギャラリーを開いている有名なキュレーターさんの
展示会場でのことです。
その日は、全部で3人の作家さんがそれぞれ一部屋ずつ
展示を行っていました。
2人の展示はビルにはいってすぐの
わかりやすいところにあったんですが、
3人目がなかなか見つかりません。
すると、後ろから若い男性の声がしました。
”あのー、俺の展示も見てってください。”
”あ、このチラシのですよね? どこです?”
”こっちです。そこのエレベーターでどうぞ。”
”あー、これじゃ、わかりにくいですよね。”
”誰も来ないから、下までお客探しに来てました。
俺、階段で先に行ってますね。”
”はい。”
このお兄さん!
なんか快活で、アーティストっていうより、
体育大にでも行ってそうな好青年って感じです。
チラシには名前とタイトルだけで、
作品の写真とかないので、どんな展示だかわからないです。
まあ、元気そうなお兄さんだから、
明るいひまわりとかの絵でも飾ってあるんだろうと
がちゃんがちゃんと騒音と振動が激しい
エレベーターに揺られ、
無事、ペントハウスに到着しました。
”お、来た来た。これ、プレゼントに差し上げてます。”
”ありがとうございます。”
手に渡されたものは、高さ20cmくらいの
ご本人の写真を切り抜いたような、、、もの。
テーブルとかに立てられるようになっています。
山登りの服装をしていて、
展示会場の入り口も登山口を模しています。
”山登りなんですね?”
”はい、これ全部で1個の作品で、登山なんですよ。”
”じゃ、拝見しますね。”
”じっくり見てくださいね。”
そう言われて、登山口から展示会場に入って、
私はこの目を疑いました。
大きな山の絵が会場全体を覆っていて、
そこを作家さん本人の写真が、
まるで登山をしているように配置されています。
その姿は最初に頂いたお土産と同じなんですけど、、、
唯一違っていたのが、一糸まとわぬ姿だったんです。
現在の日本では、アートという名の元なら、
すっぽんぽんの展示はOKということになっているようで。
ただ、山のふもとあたりでは身長20cmほどだった彼が、
山頂に近づくにしたがって大きくなり、
最後には3mほどの大きな姿に。
さすがに目のやり場に困ります。
観客は私ひとりだし、
途中で帰る訳にも行かないので、
足早に展示会場を一周して出ようとしたら、
”どうですか?”
”あ、はい。”
”もっとじっくり見て行ってください。はい、もう1周。”
”いえ、、、あの、、、、”
そこにその展示のキュレーターさん登場です。
キュ ”ごめんなさいね。じっと見ろって言われてもだよね。”
私 ”ええ。。。”
キュ ”おい、女の子一人だけの時は、連れてっちゃだめだよ。”
作家 ”なんでです?アート好きみたいなんで。”
キュ ”ついて歩いて解説とかしてないよな?”
作家 ”はい! 今からするところです。”
キュ ”ホント、ごめんね。”
私 ”大丈夫です。現代アート慣れているんで。”
キュ ”1週間ごとに展示変わるから、また来てね。”
私 ”はい。もちろんです。”
作家 ”ねえ、感想は? 気に入ってくれた?”
キュ ”いい加減にしろー!!!”
作家 ”ねえ、待ってってばー。”
ぷぷぷ。
現代アートの展示って、ほぼ作家さん本人がいらっしゃるんです。
作品よりも面白いことだけは、間違いありません。
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